
ボールパイソンは、その大人しい性格と美しい模様から世界中で人気のあるヘビの一種です。
日本国内にも多くの専門店があり、初めて爬虫類を飼育する方にもおすすめしたいヘビです。
ボールパイソンの特徴の一つに、多くのブリーダーが交配して作り出した繁殖個体の多さにあります。
野生種やファームハッチ(FH)個体とは異なり、より温和な性格の個体が多いのも魅力の一つですね。
購入時には様々な色や柄の個体が存在し、その豊富なバリエーションに悩む方も多いと思います(笑)
FH(ファームハッチ)個体:野生種の卵を採卵しファームで人工孵化させた個体のことです。
ヘビの中では動きが比較的ゆっくりでハンドリングもしやすいため、
ボールパイソンを初めてのヘビに迎える方も多くいらっしゃいます。
また、日々のお世話も簡単なので、お子さまと一緒に命の大切さを学ぶのにも最適なヘビと言えるでしょう。
今回は、ボールパイソンの飼育について知っておきたいポイントをご紹介します。
当店でも繁殖に取り組んでいるため、少々クドくなってしまうかもしれませんが、
この記事を参考にお住まいの環境に合わせてボールパイソンとの暮らしを長く楽しんでいただければ幸いです。
目次をクリックして気になるところを見て下さいね♪
基本情報
学名:Python regius
一般名:ボールパイソン
原産地:西アフリカ・中央アフリカ(ガーナ、トーゴ、ベナン、ナイジェリアなど)
平均サイズ:100~180cm
寿命:飼育下では20年以上生きた記録もあります。
飼育難易度:初級~中級
ボールパイソンは、乾燥したサバンナや半乾燥の森林、草原地帯、開けた森林などに住んでいます。
乾季と雨季がはっきりしている地域に暮らしており、
乾季にはネズミなどの地中の巣穴やアリ塚、空洞を隠れ家として利用し、1日の大半を地下で過ごします。
乾季は休眠状態になって、ご飯を食べなくなることもあります。
乾季休眠と言って冬眠のような状態で、体力を消耗しないように活動します。
ケージ内の乾燥のしすぎには注意して下さいね。
標高0メートルから1500メートルまでの幅広い範囲に生息しているため、
昼夜の気温差や乾季・雨季の環境変化にも比較的に強い丈夫な種です。
また、夜行性で夜間に獲物を探して活動することが多い点も覚えておきましょう。
飼育方法
先述の通り、乾季には巣穴でじっとしている習性があるため、
湿度管理には十分に気を付けながらケージの選定やレイアウトを工夫しましょう。
ボールパイソンは最大で180cmほどに成長する比較的大型のヘビですが、
飼育下では100〜150cm程度の個体が一般的です。
普段はトグロを巻いた状態で過ごしているため、実際の大きさよりもコンパクトに感じることが多いですが、
部屋んぽや伸ばした時にその長さを実感できるでしょう。
飼育場所の準備
ボールパイソンのケージを設置する際は、日の当たる窓辺や大きな音がするテレビの横などは避けましょう。
明るさと暗さが程よく感じられる半日陰で、静かな場所が理想的です。
ボールパイソンは「穴倉生活の引きこもり体質なヘビ」と言えるほど、落ち着いた環境を好みます。
ケージのレイアウトや設置場所も彼らの習性を意識して選ぶと安心して暮らせるでしょう。
ケージ選び
ボールパイソンは先ほどもご紹介した通り、成長すると体長100〜180cmほどになるヘビです。
しかし、巣穴にこもる習性や「引きこもり体質」とも言える一面があるため、
幼体のうちから大きすぎるケージで飼育すると、かえってストレスを与えてしまう場合があります。
終生60cmのケージで飼育できるという話も聞かれますが、
ペットとして動きを楽しみたい場合や、成長した個体にとってはやや狭く感じるかもしれません。
成長段階 | 推奨ケージサイズ(幅) |
---|---|
幼体 | 30〜45cm |
成体 | 90〜120cm |
当店でおすすめしているケージは「SANKO/PetZone-パンテオン」です。
他社のケージと比べて軽量で分解もできるため、収納や移動時に非常に便利です。
引っ越しやサイズアップ時に不要になったケージをメルカリなどで売る際にも、取り扱いやすくておすすめです。
ボールパイソンの数が増えてくると、既製品のケージだけでは置き場所に困ることもあるかと思います。
そんな時は、ブリーダーさんや専門店で販売されている「ボールパイソンラック」もおすすめです。
また、「ボールパイソン 衣装ケース」で検索すると、衣装ケースを改造して飼育している方の記事が多く見つかります。
手軽に導入できる方法や工夫がたくさん紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。
衣装ケースなどは耐熱温度が低いものが多いため、ヒートケーブルなどの保温器具を使用する際には十分ご注意ください。
ケースが変形したり溶けてしまう恐れがあるため、設置方法や温度管理には特に気を付けましょう。
当店のブリーディングルームでは透明のコンテナボックスで管理しています。
少し加工は必要ですが、とても使いやすいですよ♪
視認性・メンテナンス性を考慮したケージ選びをおすすめします!
床材選び
できるだけ生息域の環境を再現してあげたいと思う一方で、衛生面は非常に重要な要素です。
そのため、床材選びは慎重に行いましょう。
ペットショップにはさまざまな種類の床材が販売されていますので、色々と試してみるのもおすすめです。
ここでいくつか代表的な床材を挙げておきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
- 赤玉土などの砂系床材
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【メリット】
- 店主的には湿度の管理がしやすいと感じています。
- 入手が容易で安価である点が魅力です。
- 乾燥した砂漠地帯の環境を再現したい場合にはマストアイテムとなります。
【デメリット】
- 真菌系の病気が発症した場合、寛解までに長時間かかることもデメリットとして挙げられます。
- 定期的に霧吹きをしないと砂埃が酷くなりやすいため、清潔さを保つ工夫が必要です。
乾燥気味に維持しないと菌の温床になりやすい点も注意が必要です。
- アスペンチップやヤシガラなどの床材
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【メリット】
- ヤシガラは入手が容易で、価格も手頃です。
- アスペンチップは市販では少ないものの、インターネットでは多く販売されています。
- 掘り返しや潜るといった自然な行動を促し、ストレスの発散にも役立ちます。
- 毎日汚れた部分だけを清掃すれば、長持ちさせることができます。
【デメリット】
- 湿度が高いとカビが発生しやすく、菌の温床になる恐れがあります。
- ペットシーツ
-
【メリット】
- 排泄ごとに交換することで衛生面が良くなります。
- 適切に交換すれば菌の温床になりにくい点も魅力です。
【デメリット】
- 交換頻度によってはコストパフォーマンスが悪くなる場合があります。
- レイアウトが無機質になりやすいです。
- 給水ポリマーの影響で乾燥気味になることがあります。
下で紹介している業務用の大容量のペットシーツなら、コスパも良くおすすめです。
どの床材を使用するにしても、飼い主が日頃のメンテナンスを怠るとデメリットが勝ります。
温度・湿度・照明
次に、ボールパイソンを飼育する際の温度や湿度についてご説明していきます。
また、あると便利なグッズの紹介、リンクも貼っておきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
環境温湿度について
環境温度は28~30℃の空間温度を保ち、湿度は通常50~60%を意識しましょう。
脱皮時には湿度を少しあげて60~70%に調整してあげると脱皮もスムーズにできます。
脱皮前に目が濁ったり体表が白くなる兆候が見られたら、湿度を少し上げることをおすすめします。
また、脱皮の際に体を擦り付けられるようなアイテムをケージ内に入れてあげると良いでしょう。
ケージ内の温度と湿度の管理には、安価で見やすいツインメーターの使用が特におすすめです。
しっかりと日中の温度勾配を確認したい方には、Switchbotの温湿度計がおすすめです。
スマホアプリと連動することで、温度や湿度の変化をグラフで簡単に確認できますし
hub2と連動すればWiFiで出先でも確認出来るのがメチャクチャ便利です✨
ホットスポット温度:32℃程度(底面)
ホットスポットは、ケージの床面積の約3分の1程度を確保すると良いでしょう。
ボールパイソンは変温動物なので、食べた物を消化するために外部からの熱が必要になります。
そのため、パネルヒーターを使って床面にホットスポットを作ってあげることをおすすめします。
ホットスポットの温度を測る際には、サーモチェッカーなどの専用機器が便利です。
ツインメーターを床に置く方法もありますが、糞や尿酸で汚れてしまうことが多いです・・・
照明について
当店では、ボールパイソンの飼育にあたり基本的に照明は必須ではないと考えています。
ただし、室内に明暗のサイクルがない場合や、生活リズムを作りたい場合には照明の使用をおすすめします。
ボールパイソンの体内時計を補う意味でも、明暗の昼夜リズムがあると給餌のタイミングを合わせやすくなります。
夜間は温度を24~26℃と少し下げるだけで昼夜のサイクルを再現できるため、
ご自身の好みや環境に合わせて照明を使っていただいても構いません。
UVBライトは必須ではありませんが、健康管理や自然光の再現を目指すのであれば推奨します。
もしUVライトを使用する場合は、微弱なタイプがボールパイソンに適しています。
給餌と給水の方法
給餌するマウスのサイズについては、非常に多くのご相談をいただいております。
ここでは、給餌のポイントと吸水・水入れについてご説明いたします。
給餌
ボールパイソンに与える餌のサイズは、個体の成長段階や体重によって最適な大きさが異なります。
一般的に「ボールパイソンの胴体の一番太い部分と同じくらいの大きさ」を与えるのが目安と言われています。
給餌の頻度については、排泄ごとや週に1回などさまざまな方法がありますが、
飼い主さんの生活リズムに合わせて、個体が痩せすぎないペースで給餌することが大切です。
普段のハンドリングや観察を通じて、給餌のタイミングを見極めてくださいね。
給水と水入れ
給水に関しては、できる限り新鮮な水を与えるようにしてください。
できれば2日に1回程度のペースで水を取り替えるのが理想的です。
普段からしっかりと水を飲める環境を整えることで脱皮不全の予防にもつながりますので、
水切れのないように気を付けてください。
水入れに関して
【体の浸かる水入れ】については、当店はやや懐疑的な立場をとっています。
常に新鮮な水を保てている場合は問題ありませんが、そうでなければ雑菌の温床になるリスクがあると考えています。
特に30~38℃を好む中温菌は、このような環境で増殖しやすいため注意が必要です。
また、タッパーなど蓋を丸くくり抜いた容器を水入れに使う方法については、
「ボールパイソンが溺れて死んでしまった」というご相談を受けたこともあり、当店では否定的です。
個体差はあるもののリスクを減らすためにも、当店ではこのような容器を使用していません。
飲み水用の水入れは、ボールパイソンの頭の2~3倍の大きさのものを用意しています。
数回で飲み切れる量なので、実際に飲んでいる様子を確認してから適宜水を足すようにしています。
お迎えになったボールパイソンの特徴や個性を見ながら、環境を整えてあげてくださいね。
ハンドリングや日頃の付き合い方
日頃のハンドリングについては、繁殖個体とファームハッチ(FH)個体では初期段階で大きく異なる印象があります。
繁殖個体は「おっとり」した性格の子が多く、逆にFH個体は「警戒心が強い」傾向があると感じています。
FH個体は野生種に限りなく近いため、警戒心が強く臆病で、時には攻撃的になることもあります。
順応期間としては、導入から2~4週間はストレスを与えず、じっくり環境に慣れさせることが大切です。
信頼構築には、短時間・静かな環境で徐々に慣らしていき、嫌がる素振りが見られたらハンドリングを中止してください。繁殖個体の場合は幼体期から短時間のハンドリングで慣れさせることで、比較的スムーズに社会化が進みます。
余談にはなりますが、飲酒後や女性の基礎体温が上がっている時など、
平常時と異なる体温の状態でのハンドリングは控えた方が良いでしょう。
真偽のほどは定かではありませんが、「飼い主の体温を記憶している」といった話も稀に耳にします。
「触りにくる温度」といった程度の認識はあるかもしれません。
平常時と違う温度帯の手が近づくと「餌と誤認」したり、恐怖心から攻撃的になることも考えられるため、
平熱時のハンドリングが安心ですね。
メンテナンス中にボールパイソンを首に巻いて作業される方もいらっしゃいますが、
耳を餌と間違われて噛まれたり、首を絞められてしまう事故も実際に知人の間で起きています。
このような危険な行為は絶対に真似しないようにしましょう⚠️
まとめ
以上がボールパイソンの基本的な飼育方法になります。
まだまだ書き足りないことや伝えたいこともありますが、十分に長い記事になってしまいました(笑)。
また別の機会に詳しくご紹介できればと思います。
ボールパイソンはその愛らしい姿と大人しい性格が魅力ですが、飼育には一定の知識と努力が必要です。
必ず事前に情報収集を行い、適切な環境を整えてあげてください。
初めての方でも、さまざまなサイトや飼育書でしっかりと飼育方法を学び、可愛いボールパイソンを育ててみてください。
途中、商品リンクが多くてうるさいですが、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
それでは、よい爬虫類ライフをお過ごしください!
参考リンク集
🐍 ReptiFiles – Ball Python Care Guide
アメリカの専門家によるボールパイソン飼育ガイド。科学的根拠に基づき、ケージ環境や給餌、健康管理まで幅広く解説。初心者にも分かりやすく、信頼性の高い情報がまとめられています。
特に温度や湿度管理、基質の選び方など実践的なポイントも丁寧に紹介されており、実際の飼育環境作りにも役立ちます。爬虫類飼育の基礎から応用まで体系的に学べるため、安心して参考にできる一冊です。
🏪 Evolution Reptiles – Ball Python Care Sheet
イギリスの有名爬虫類店が提供するケアシート。現場のプロによる実践的な飼育ノウハウが掲載されており、温度・湿度管理やエサの選び方など丁寧に解説されています。
ケージのレイアウトや清掃方法、脱皮時のケアなども具体的に説明。長期飼育や多頭飼育にも役立つ情報が多く、初心者からベテランまで満足できる内容です。
🌍 Advancing Herpetological Husbandry(Facebookグループ)
世界中の飼育者や専門家が集まるコミュニティ。ボールパイソンを含む爬虫類の飼育情報や最新研究、飼育の悩みも気軽に相談できる場所です。
実際の飼育写真や動画も多く投稿されており、現場感覚で学べるのが魅力。環境作りや基質選び、パネルヒーターの使い方など、さまざまなテーマについて活発に議論されています。